読書『税金を払うやつはバカ!』大村大次郎
今回は大村大次郎さんの『税金を払うやつはバカ!』と取り上げる。
2014年の作品なので、少し古いが書評としてまとめる。
中々のタイトルだよね(^^♪
■著者プロフィール
元国税調査官。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務。
退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。
執筆、ラジオ出演、テレビドラマの監修等で活躍。
税金関連の著作多数。
===前書き===
「税金を払うやつはバカ」
意味は二つある。
①今の日本に税金を払っても、国や会社の為にはならない。
②税金を払っている人は、税金のことを全く知ろうとせず、節税をしてない。
→このことが原因で、政治家も国民をなめ切り、国民も間接的にこのシステムを作ってきた。
もくじ
1章 日本に税金を払うのは金をどぶに捨てるよりも悪い
●人口データ的に日本は破綻する
・著者が税金を払うこを馬鹿らしいと思う理由
→「このままいけば日本は必ず破綻する」と考えているから
少子高齢化を問題にしており、2045年には高齢者の割合が全体の4割になる
(国立社会保障・人口問題研究所の発表)
●少子高齢化は人災である
少子高齢化の最大の理由は「経済問題」にあるとみている。
→90年代以降、急速に非正規社員が増加。これが少子高齢化を加速。
男性の場合、正社員の既婚率は40%、非正規社員の既婚率は10%。
安定した収入がないと結婚できないと推測。
つまり、「非正規社員が増加した分、未婚男性が増加し、少子化も加速する」
どれだけ経済成長しても子供の数が減れば、国力は減退する。
これを最も防がなければならないが、既得権益の為、政治家は手を打たない。
●非正規雇用のほとんどは、生活保護受給者になる
2014年時点で非正規雇用は1900万人を超えており、
まともに社会保健に加入していない。
彼らが高齢者になったとき、ほとんどの人の年金は生活保護以下と考えられる。
→このままいけば、国民の20~30%が生活保護になる可能性がある。
●本当は日本には金は十分にある
一方で、日本全体の富は、急増している。
日本は1000兆円以上の赤字を抱えているが、
1500兆円の個人金融資産があるとされている。
(どちらも世界的にみて非常に高い数字)
これらの多くは1部の富裕層が握っている。
企業は300兆円の内部留保を抱えている(世界で断トツ1位)。
本来であれば、富裕層や企業から税金を取ればよいとなるが、
国民に負担のかかる「消費税」や「社会保険料」を上げてきた。
信じがたいが、高額所得者の税金は20年間で40%も減税された。
●「日本の金持ちの税金は世界一高い」という大嘘
日本の金持ちにの税金には様々な抜け穴が容易されており、
実質的には安い税金しか払っていないという事実がある。
金持ちが税金を普通に払えば、財政問題は解決する。
(消費税5%上げたと同じくらいの効果、10兆円の税収UP)
●日本の投資家の税金はアメリカの半分以下
日本の代表的な金持ちは、
「企業経営者・企業幹部」43.3%
「医師」15.4%
とこの二種で6割を占める。
そしてこの二種に対しての税金が安い。
会社経営者は自社の株を保有しており、投資家でもある。
この投資家への税金が日本は著しく安い。
配当所得は分離課税となっており、どれだけ稼いでも
約20%で収まってしまう。
開業医も優遇されている。
無条件に売り上げの72%が経費として認められる。
事業税も優遇されており、そのため金持ちになる。
このしわ寄せが社会保障に来ている。
※開業医は日本医師会という最強の圧力団体がある。
自民党に有力な支持母体で、多額の政治献金をしてきたので優遇されている。
●大企業ほとまともに税金を払っていない
輸出企業は税制で非常に優遇されており、抜け穴が多い。
たいがい現地法人をつくり、日本企業は株を持っており、子会社とする。
現地法人の利益とし、配当をもらう形で収益を上げる。
これには税金は課せられないので、輸出して稼ぐほど税金は安くなる。
よくある抜け穴は「租税特別措置法」。
簡単に言うと「特定の企業の税金を安くしましょう」というもの。
国が定めた税金の抜け穴と言える。
これの代表的なものが、「試験研究費の特例」
試験研究の費用を10%減額するもので、事実上法人税が20%引き下げられたと同じ。
●大企業はしっかり稼いでいる(内部留保の増大)
内部留保は企業でいえば貯蓄になる。
バブル崩壊後も増え続けている。
本来は設備投資等に用いて社会に還元されるべきであるが、
現金預金でため込まれている。
2014年時点で、200兆円もの金が企業の中で眠っており、
社会の金回りが悪くなって当然である。
ちなみに、2020年現在ではさらに膨れている(下記図参照)
●法人税が下げられても賃金は上がらない。
企業の利益はサラリーマンではなく、株主のものである。
企業の利益が増えれば、当然株主に回される。
この20年で法人税は20%下げられ、
サラリーマンの給料はほぼ一貫して下げられてきた。
2章 中小企業は税金を払わなくていい
●中小企業は存在しているだけで社会的価値がある
著者は、中小企業は存在しているだけで社会的な価値があり、
「税金などは払わなくてよい」と考えている。
日本を支えているのは中小企業なのに、
国は度重なる消費税増税、社会保険料の値上げで苦しめている。
税金ほど無駄な支出はない。
●まずは「企業セーフティ共済」を使いこなそう
取引先に不測の事態が起きたときに、資金手当てをしてくれる制度。
毎月積み立てし、取引先が万が一つぶれた場合等、積立金の10倍まで無利子で貸してくれる。
さらに、本当の効果は「節税になる」ことにある。
掛け金をすべて経費に算入できる。
(5000円~20万円まで)
さらに1年分の前払いもできるので、実に240万円分の利益を消すことができる。
➡経営セーフティとは、倒産防止保険がついた定期預金のようなもの。
●社長の報酬は高めに設定しよう
中小企業の税金を安くする上で、「社長の報酬は高めにする」こと。
そのほうが節税上、絶対に有利。
社長の場合、年度の途中で増額ができない。
儲かった分はすべて利益に反映され、40%近くが税金で持っていかれる。
だから高めにしておき、会社がマックス儲かった時を基準に額を決める。
万が一事業が上手くいかなければ、未払いか減額をする。
●ボーナスを厚くすれば社会保険の節減になる
健康保険はボーナスの年間540万円までしかかからない。
厚生年金は月150万円までしかかからない。
ボーナスを厚くすれば社会保険料の節減はより大きくなる。
●収入を家族に分散する。
家族経営を例にとる。
収入が1000万円あったとして、社長がすべて給料としてもらうと
税金は200~300万は取られしまう。
しかし、社長300万、社長の父300万、妻100万、社長の母100万、娘100万、息子100万
とした場合、税金は数十万で済む。
●決算賞与を使いこなす
家族社員の場合、さらに役立つ節税策は「決算賞与」である。
決算期に出すボーナスで、利益調整のうってつけアイテム。
欠点としては役員には出せないこと。
だが、単純に利益が出た分決算賞与を払えば、利益はなくせる。
●上手に「公私混同」する
中小企業の節税で最も手っ取り早いのが「公私混同」である。
一定の手順をふみ経費ということにする。
その手順というのは「会社の業務で使ったかどうか」だけである。
どんな費用でも会社の業務に使ったものならば、原則経費で落とせる。
たとえば、スポーツカー。(営業など会社の業務で使っていれば経費で落とせる)
●会社の飲み代を出す
本来、法人税法では、接待交際費は経費として認められていない。
しかし、現在の特例では、資本金1億円以内の中小企業は
年間800万円まで接待交際費を経費にすることができる。
これはゴルフやレジャー等でも使えるし、贈答品などでも使える。
●会議費として飲食費を出す
800万以上使い、ランチなども経費で落としたい場合は、
「会議費」を使うとよい。
大体3000円程度であれば落とせるが、会議としてふさわしい場所
(居酒屋などはダメ)である必要がある。
●会社の金で旅行をする方法
最も使いやすいのは「視察旅行」である。
会社の業務の為に視察を行う旅行のこと。
会社の業務に少しでも参考になっていればよく、かなり範囲は広い。
●本、雑誌も会社の経費で落とす
●自宅のパソコンも経費で落とす
3章 サラリーマンでも節税できる
●ふるさと納税をやってみる
これは自分が好きな自治体に寄付をすれば、その分、所得税、住民税が安くなるもの。
しかも寄付した自治体から謝礼として特産品がもらえるので
差し引きするとかなりの「儲け」になる。
具体的に言うと、寄付した額のマイナス2000円分が返ってくる。
5000円相当の特産品をもらったら、実質は
30000円の寄付で28000円のバックと5000円の特産品で
3000円分得した形になる。
注意点としては、税金還付には上限があるということ。
具体的には、住民税・所得税の1割まで。
それ以上は本当の寄付になってしまう。
年収400万だった場合、住民税・所得税は20万程度なので
ふるさと納税で使えるお金は2万円までとなる。
●医療費控除をすれば税金還付になる。
年間10万円(または所得の5%以上)支払っていれば、若干税金が戻ってくる制度。
医療費は、以下のように広範囲である。
①病院に支払うお金(診療代や歯の治療代など)
②治療薬の(市販薬、栄養ドリンク等)の購入費
③入院や通院のための交通費
④按摩・マッサージ・指圧師、はり師などの施術費
⑤禁煙治療、一定条件をクリアした温泉療養、スポーツジムの会費等
etc...
●サラリーマンは大家になると節税できる
不動産を購入し、不動産所得を赤字にしてその分税金が安くなる。
減価償却、ローンの利子分を経費にできる。
●サラリーマンの社内独立か
社内で独立して会社をつくる方法もある。
事業者になれば様々な経費が計上できる。
たとえば、家賃。
経営者ならば、自宅を会社の事務所にして、
家賃、電気代、水道、インターネット料金も経費にできる。
接待交際費を使いま来るとよい。
資本金1億円以下の場合念800万円使用できる。
福利厚生費も大幅節税できる。
自分が会社をつくればこれも使える。
たとえば、スポーツジムの会費。
また観劇やスポーツ観戦(年に数回程度)。
●サラリーマンが社内独立できる条件
雇用契約から業務契約に代わる。
「上司の指示を受けずに一つの業務を引き受けることができる人」
「細かい経理の作業もいとわない人」
※設立登記に数十万かかる
※社会保険料はかなり高くなる。約2倍になる。
4章 給料の払い方を変えれば会社も社員も得をする
●給料のもらい方を変えるだけで手取り2~3割アップする
給料のもらい方を変えるだけで2~3割は手取りがアップする。
給料の中には「社会保険料」と「税金」が含まれているがこれが高い。
市民税10%、所得税5~33%(年収500万で約10%)、
社会保険料(健康保険8.2%、厚生年金14.642%)。
合計すると約40%前後となる。
●給料のもらい方を変えるとはどういこうことか
給料には「税金のかかるもの」と「税金おかからないもの」がある。
かかるものは、金銭的に支払われる正規の給料。
かからないものは、経済的恩恵(福利厚生や家賃補助、遊興費んど)のこと。
会社としては、同じ給料を払うにしても
費用対効果の大きいほうが良い。
(40%も税金でとられるよりは、社員に還元したい)
税金のかからない給料は2通りある。
①給料で支払っているが、税法で「税金をかけない」と決められているもの(非課税手当)
・通勤費(10万円まで)
・食事代(金額の制度あり)
・家賃の補助
・仕事に必要な技能の習得費用
・創業や永続勤務の記念品
・日直費
・出張費用、日当
②給料以外で経済的利益をあたえる(福利厚生、出張旅行、現物支給)
社員の税金、社会保険料を節減するには、いかに給料以外で経済的な利益を与えるかである。
●給料の代わりに家賃補助をもらえば税金が劇的に安くなる
会社がアパートやマンションを借り社員に住まわす。
社員は一部(約15%)を払えば、社宅を借りていると見なされる。
ただし、不動産とは会社が契約する必要がある。
家賃10万円のマンションの場合
会社は85000円、社員は15000円(15%)となり
この85000は税金のかからない給料となる。
年間にすれば102万にもなる。
これを普通に給料としてもらえば年間40万以上も税金で取られる。
ところが給料を102万円さげ、その分家賃を肩代わりしてもらえれば
40万円が自分のものとなる。
●社員に接待交際費の枠を与える
1億円以下の会社は接待交際費として年間800万円使える。
例えば年間20万を接待交際費として使う。
給料として20万円もらえば、8万円の税金が取られるが、
接待交際費として使えば。それは取られずに済む。
●研修旅行、視察旅行を使いこなす
視察旅行という目的をつくって、行くことである。
日程も半分以上は「会社の業務」を入れておく必要がある。
レポート等も作成する必要がある。
●スポーツジムの会費を会社が持つ
スポーツジムの利用料が年間12万円だったばあい、
税金でその他に4万8千円を払っていることになる。
それを会社費用で払える。
●その他もろもろ
・会社名義で車を買う
・会社名義でパソコンを買う
・携帯電話代を会社が払う
・生命保険料を会社が出す
・本、雑誌代を会社が出す
・英会話の受講料を会社が出す
5章 消費税で儲かる人たち
●消費税ほど不公平な税金はない
著者は消費税ほど不公平な税金はないと考えている。
消費税は国民全体に負担を押し付ける税制であり、
一部の企業に「得をする税金」だからである。
●輸出企業は消費増税で得をする
輸出企業が得をするのは「戻し税」があるから。
消費税は国内で消費されるものだけかかるという建前があり、
輸出されるものにはかからないのである。
ところが、輸出されるものは、国内で製造される段階で
材料費などに消費税を払っている。
そのため、「輸出されるときに、支払った消費税を還付する」のが戻し税。
しかし、事実上これは、輸出企業への補助金となっている。
というのは、輸出企業は製造段階で消費税を払っていないから。
トヨタは2009年度、2100億円の戻し税を受けている。
消費税の十数兆円の税収に対し、戻し税だけで1兆円以上払っている。(おかしいとしている)
まとめ
著者が国税局の職員としてはたらき、その中で、大企業への税金などをみて
不公平だと感じていることが分かった。
結論として、税金を払わなないことが、国へのプレッシャーとなり
政治家も税金について考えざるを得ない状況にすることが
日本をよくすると考えているようだ。
(少し大げさすぎるようには感じるが。。。)
いずれにせよ、税金があり、それを国が良いように使わなくては
国民(正確に言うと税金に詳しくない人々)が苦しむということのようだ。
だからこそ、金持ちは税金について勉強し儲かるよう工夫する。
国民も税金について勉強する必要がある。
確かに無駄な税金は払いたくないしね。
今後、デジタルマネー(Web3時代)が浸透していけば
このような問題もなくなりそうだな。
ただ、先行投資者が利益を受けることは変わりなさそうなので
とにかく勉強はしていこう。